季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
略奪で得た幸せは格別に甘い蜜の味?
食事会の日から2週間が過ぎた。

あれから順平とは家の中でもほとんど顔を合わさず、必要以上の事は話さないし、バーで仕事をしている時も、目を合わせようともしない。

突然キスしたりもしない。

元に戻ったと言えば元に戻ったんだと思う。

ほんの少し縮まっていた二人の距離を、お互いに引き離そうとしている気がする。

サクラの役目も終わったし、今はただのバイト仲間で、同居人。

いつかまた離れる日が来るんだから、深入りしないのが一番だ。

相変わらず恵梨奈は順平の事を私の彼氏だと勘違いしたままだけど、新しい彼氏とラブラブで順平の事なんかすっかり忘れているから都合がいい。

面倒だからこのまま触れないでおこう。





今日はカフェのバイトが休み。

家事は済んだし、夕方まで時間もある。

昨日給料が入ったから、どこかでランチを食べて、買い物にでもいこうかな。


洗面所の鏡の前で身支度を整えていると、スマホの着信音が鳴った。

画面に写る名前を確認して、私は慌ててスマホを手に取る。

「志穂!!」

思いのほか大きな声だったらしく、電話の向こうで志穂が大笑いしている。

「久しぶりー、元気?」

「まあまあかな。もう戻ってるの?」

「先週戻って来た。これから会わない?」

「会いたい!!」


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