季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
私は食事会の日にあった出来事を話した。

「結果的には二人で幸せにはなれなかったけどね。別れてようやく、壮介とわかり合えた気がするよ。」

「別れてからわかり合えてもねぇ。それにしても…家族に近いってのはどうよ。」

「まぁ…私も同じような感じだったんだと思うんだよね。壮介に別れてくれって言われた時、理由聞くより、この時期になって何言ってるんだって事しか頭になかった。」

「ふーん…。無駄な3年間だったね。」

「そうとも言えるけど…それだけじゃなかったかも知れない。誰が相手でも、あの時は同じような感情しか持てなかったかも。」

順平の元から離れたばかりだった私は一人で立っていられるほど強くなかったから、きっと居場所を求めていたんだと思う。

だから壮介がちょうど良かった。


志穂はコーヒーを飲みながら私の顔を見た。

カップをソーサーに置く音がカチャリと響く。

「…順平くんの事、まだ引きずってる?」

驚いたな。

志穂、覚えてるんだ。

「どうだろう。引きずってる…のかな?」

「別れるって決めたのは朱里でしょ?」

私は志穂に、順平と別れる決意をした理由を半分しか話していない。

「うん、そうだよ。好きすぎてね。」

「それも私にはわからないけど。」

志穂にとって私の考えは、きっと理解できない事ばかりなんだろうな。




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