季節外れのサクラの樹に、嘘偽りの花が咲く
呆然とその姿を見送る私の肩を、志穂が強く揺すった。

「朱里、これどういう事?!」

「私にもわからないよ…。」

「もしかして…紗耶香の言ってた友達って、朱里だったって事…?」

「………。」


混乱する頭の中でかき集めた情報が、パズルのピースのようにカチカチと音をたてて繋がっていく。

ああ、そうなんだ。

今目の前で見たものがすべてを物語っている。

私は、親友だと思っていた紗耶香に、婚約者を奪われた。

それが動かざる真実だ。

私はうつむいて唇を噛みしめた。

志穂は心配そうに私の背中に手を添えた。

「朱里…大丈夫?」

「……うん。今更何言ったって、どうにもならないしね…。」

「あのさ…もうちょっとだけ時間いいかな?」

「うん…。」

「じゃあ…とりあえず、ここ出ようか。」

店を出て広場のベンチに座ると、志穂は神妙な面持ちで私の方を見た。

「こんな時に酷かも知れないけど…紗耶香から前に聞いてた事、全部話すね。勝手に話すのもどうかと思ったから詳しく話さなかったけど、朱里にはそれを知る権利があると思うから。」





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