とっくに恋だった―壁越しの片想い―


「こんなの、重たいだけよ。男がみんな大きい方が好きってわけでもないんだし」

恐らく、胸の小さな私をフォローしてくれようとしたのだろう。

けれど、そう話し出しフォローしようとしてくれた樋口さんは、私の胸に視線を落とすとわずかに眉を寄せた。

「……にしてもって話よね。野々宮さん、カップ数は?」
「……65A」

「ああ……」と納得の声をもらした樋口さんを見る限り、やっぱり客観的にも私の胸は深刻なようなのだけど……。

「でも俺、野々宮のその顔とスタイルには、その大きさがあってると思う。逆に、でかかったらちょっと嫌だ」

いつのまにか痛みから復活した木崎さんは、顎に手を添え眉を寄せる。

「やっぱりあるじゃん。こういう顔の子は胸でかそうとか、その逆とか。全体的にバランスがよければ、俺は大きさとか気になんない」

そんな木崎さんに、樋口さんも「それもそうね」と頷く。

「バランスって大事だし、確かに野々宮さんが巨乳だったら、スタイルおかしくなっちゃうかもね。せっかくすらっとしてて綺麗なのに」

「だろー? それにさ、やっぱり好きなら大きさなんてどうでもいいもんだって。だから自信持てよ。平沢さんだって、そりゃタイプだとかはあるだろうけど、好きになっちゃえばそんなの関係ないハズだから。なっ」

フォローしてくれているつもりなんだろう。
木崎さんがにこっと笑い言ってくれるも……。

「そもそも、平沢さんは私を好きじゃない……」

そう小さく呟きゆっくりと俯くと、向かいの席から「んぐぅ……っ!」と悲痛の声が聞こえた。




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