とっくに恋だった―壁越しの片想い―
「そうよー。前、言ったじゃない。詰め込むタイプなんだからうまくガス抜きしないとって。仕事一年目で大変なのに、そこにきてプライベートでまで悩んでたら誰だって体調崩すわよ。
野々宮さん、素直に甘えられるタイプじゃないから見ててじれったかったの。だから、こんな形だけど、なにかしてあげられてよかった」
柔らかい声に言われ、思わずじんわりと涙が浮かぶ。
それを感じ下唇を噛みしめると、私の様子の変化を感じ取ったのか、木崎さんが慌てて言う。
「あ、ちょ、野々宮ストップ! これ以上体力削るようなことしたらおまえ倒れるぞ! 泣いたりしたら、たぶん干からびる!」
わたわたと手を忙しく動かしながら言う木崎さんを見ていると、樋口さんが小さく息をつく。
「木崎、野々宮さんをおんぶしたらあまりに軽いから驚いちゃったみたいで、ずっと言ってるのよ。
なんか食べさせないとマズイとか、飲ませないとダメだとか。しまいにはプロテインとか言い出すから本当にうっとうしかった」
「え……ああ、なんかすみません……」
私が寝ている間、樋口さんはずっと木崎さんのそんな話を聞いていたのかと思うと、それも申し訳なくなって謝る。
木崎さん、テンション高いから、マンツーマンで長時間話すって結構大変そうだ。
そんな失礼なことを思っていると、樋口さんは私の考えを読んだようなタイミングで笑った。
「大丈夫よ。もう慣れっこだから。それより、なにか飲んだら? ホットのココアでも飲む?」
「あ、はい……じゃあ、そうします」
そう言って立ち上がろうとすると、「俺が行くから野々宮は座ってろ」と、木崎さんに言われるも。