とっくに恋だった―壁越しの片想い―

けれど、面と向かって好きだと口にできたことだって、告白のときの一度だけの私には、いくら勢いがついていたところでそのハードルは高く、せっかくの気合が胸の真ん中でシュワシュワと音をたてて萎んでいくのが聞こえるようだった。

……っていうか。
関係を先に進めたいなんて、そもそも平沢さんは望んでいてくれているのだろうか。

そんな今更すぎる疑問が突如湧いてきて、喉を塞ぐ。

平沢さんが我慢しているなんて、自意識過剰だったかもしれない。
全部が私の勘違いってこともある。

シュワシュワと気合が溶けると、それまでは見えなかった色んな不安が姿を現し一気に弱気になってしまう。

――でも。
ドクドクと不安を助長させる音を響かせる胸の前で、手をギュッと握り平沢さんを見る。

キッと睨むようなまなざしになってしまったからか、平沢さんは不思議そうに私に視線を返していた。

長方形のテーブルで、Lの字の短い部分に私、長い部分に平沢さんという、いつも通りの位置に座っているっていうのに、いつもとは違う緊張感に押しつぶされそうになる。

「華乃ちゃん?」

私は恋愛初心者だから、正しい道筋なんてわからない。
どういう進み方をしたらいいのかも、いつ進みだしたらいいのかもわからない。

だから、正しいかどうかもわからない道を、真っ暗ななか踏み出すのは怖い。
それでも――。


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