とっくに恋だった―壁越しの片想い―
「華乃……っ?!」
膝立ちになった私がじりじりとにじり寄っても、平沢さんは首を傾げたそうな顔をして私を見ているだけだった。
けれど、私に押し倒されたところでようやく焦ったような声をあげる。
わけがわからなそうに顔を歪める平沢さんに構わずに、その腰の上に馬乗りになってから、すっと息を吸い込んだ。
心臓が爆発しそうだった。
「華乃ちゃん? どうした……」
「私は、平沢さんとこの先のこともしたいと思ってます」
焦りだけが浮かんでいた平沢さんの顔に、驚きが広がっていくのが見て取れた。
私がこんなことを切り出すなんて思ってもいなかった顔だ。
それもそうだろう。
私は自分自身でも淡泊な方だと自覚しているし、それに意地っ張りだから、そんな私に押し倒された平沢さんが驚くのもよくわかる。
でも、だけど。
「好きだから……平沢さんにもっと触れたい」
声にしなきゃ伝わらないって、知ってるから。
欲しい欲しい、ばかりじゃなくて、自分からも歩み寄らなくちゃダメだって思ったから。
平沢さんのお腹の上に置いた手を、ギュッと握りしめる。
「平沢さんにも、できるならそう望んでほしい……んですけど、平沢さんは、同じ気持ちではないですか?」
一方的に話しているうちに、自分の気持ちを押し付けているだけに思えてきて、どんどん弱気になってきてしまい、最後はうかがうような声になっていた。
痛いほど跳ね上がる鼓動が緊張をあおり、ただ話していただけだっていうのに心拍数は長距離を走ったあとのように速い。
胸が痛い。痛くて、苦しい。