とっくに恋だった―壁越しの片想い―
勤務時間外でも、製造ラインは動き続けているから、システムトラブルがあったときは夜中だろうとなんだろうと呼び出しの電話がかかってくることもあるっていう話だ。
そこで平沢さんは、シフト勤務をしている。
こんな風に、私が帰ってくる時間帯に起きているってことは、明け方から夕方までのシフトか、もしくは二十三時くらいからのシフトか、どちらかだ。
どちらにしても、申し訳ないと思い、「いえ、大丈夫です」と口にしたとたん、それを平沢さんが遮る。
「ちなみに今日はドリアにする予定。
周りにホワイトソース、真ん中ミートソースの、華乃ちゃんがおいしいって言ってたやつ。俺がホワイトソース作ったりしてる間に、玉ねぎのみじん切りしてくれる?」
……世話を焼いてもらうのは、申し訳ない。
けれど、もうその厚意に甘えるということに慣らされすぎてしまったせいで、断るよりも誘いに乗る方が私にとって自然なことで。
ついでに、平沢さんイコールご飯という式が頭の中で成り立ってしまっているのか。お腹までぐーっと反応する始末。
「……荷物置いて着替えたらすぐ行きます」
「ん、待ってる」
笑顔に頷いてから、部屋のドアを開けた。