とっくに恋だった―壁越しの片想い―
キョトンとしてるところを見ると、理想が高いだとか思われていたのかもしれない。
「自分がわがままで面倒くさい性格してるのはわかってるので、それをわかってて受け入れてくれる人なんて、それだけでいい人って気がしますし。
その前に、そんなになんでもかんでも受け入れてくれる人なんて、そうそういないんじゃないかなぁって思ってますけど」
ジュージューと音を立てながら、ひき肉と玉ねぎがフライパンの上で色を変えていく。
そこに平沢さんは塩と胡椒を落としたあと、顆粒のコンソメを振りかける。
それからトマトケチャップをかけて、しばらく炒めたあと火をとめ、ホワイトソースの上にかけながら「そんなことないと思うけどなぁ」と言った。
「華乃ちゃんの性格、そんなに受け入れがたいレベルではないと思うけど」
「お世辞とかいいです」
「じゃなくて。まぁ、確かにわがままな部分も面倒な部分もあるかもだけど、それも可愛いと思うって話」
粉チーズをふりかけたミートドリアを平沢さんから受け取り、オーブンに並べながらため息を落とした。
「みんながみんな、平沢さんみたいに心が広くはないんですよ」
私が知る限り、この人の心の広さは異常だ。
心の広さというか、自分のことを後回しというか。とにかく、他人を優先しすぎるから。