とっくに恋だった―壁越しの片想い―


「確かに、ここ二週間くらい、なんか疲れるんですよね。
仕事に対して不満だとか不安だとか、そういうのがあるんじゃないんです。むしろ仕事の内容は前よりも充実しているのに……なんでだか」

仕事自体は慣れてきたし、ひとりで任せてもらえる内容も増えた。

端末を使ってのオペレーションだって、通常使うようなものは覚えたし、そこは、営業部長にも先週褒められたところだ。
仕事が速くてそつがないって。

とても嬉しかったし、これからのやる気にも直結した。……ハズなのに。

ここ二週間、毎日仕事を終えて部屋に戻ると、ぐったりとしてしまうのは変わらなかった。

ぐったりとするくせに、眠りは浅いから、翌日にもそれを引きずってしまうんだろうっていうのにはすぐに気付いたけれど。
気付いたところで眠りが深くなるわけではないから、軌道修正ができずにいる。

もっとも、浅くても眠れてはいるし、食欲だってそんなにはないとはいっても、食べられてはいるから、最低限はできている。

だから……まぁ、大丈夫だろうと思い続けて早一週間。
長い。

「仕事に来たくないと思うわけでもないので、ただ、季節の変わり目のせいかなぁと。寒いの苦手なので」

そう言いながら、好きではないビールを一口飲んで……あれっと思った。
寒いの苦手だとか、季節のことだとか、少し前にも思ったなぁと。

あれは……いつだったっけ。


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