とっくに恋だった―壁越しの片想い―
〝ウグイス定期〟は、受け入れ期間締切一週間を残したところで、去年の結果を越したらしい。
去年出た枚数で証書を注文していたため、途中、このままじゃ足りなくなると、新たに五十枚を本店に注文したのが先週のこと。
締切を明日に控えた今日の時点で、残りの証書枚数は二十八枚。
営業が回っている先の顧客は、先週半ばくらいまでにほぼ処理が終わっているし、あとは店頭にくるお客様くらいで、どうやら再び注文をかける必要はなさそうだった。
窓口係がどんなに熱心に勧誘しても、この支店の来客人数から予想して、二日間で二十八枚は出ない。
私もこの一ヶ月、〝ウグイス定期〟のオペレーションをとにかく繰り返す毎日だった。
朝、営業についていって帰ってきては〝ウグイス定期〟。
午後、梨元社長にネチネチ言われて帰ってきてから〝ウグイス定期〟。
本当に寝ても覚めてもという感じで、その辺に止まっているスズメがウグイスに見えたときには、自分自身にヤバいと焦った。
帰宅時間は、早くて二十時半。遅くて二十二時過ぎ。
そんな毎日から明日になれば解放されるのだと思うと、かなり嬉しい。
それは他の社員も同じようで、明日の飲み会の予定がもうすでに立っているほどだった。
幹事はもちろん木崎さん。
出席するかは……正直、考え中だ。
と、いうのも。
「ちょっと野々宮さん……その顔色どうしたの?」
著しい体調不良が理由だ。