夏 恋 花 火

部屋に着いて電気をつけるなり、私はベッドに倒れこんだ。


「浴衣かぁ……」


クラスの皆、盛り上がってたなぁ。

確かに浴衣って可愛さ、美しさ、色っぽさ、三割り増しって感じだもんね。


着るだけで何だか、うきうきしてくるっていうか。

夏祭りや花火大会くらいしか、着る時ないしね。


私は想像した。

北川先輩と浴衣でデート……。


“友香ちゃん”


きゃ~!

先輩、武士顔だし、似会うんだろうなぁ。

想像するだけで鼻血が出そう!



“俊也くんのも作ってるのよ”



俊也は……どうだろう。

俊也の浴衣姿を想像しようとすると、子供の頃にお面をかぶって走り回って、見事にずっこけた所しか思い浮かばない。


あの後、大泣きして大変で、結局わた飴買ってもらって落ち着いたっていう…ね。



でも、あれは昔の話だし、

本音を言えば……今の俊也の浴衣姿、ちょっと見てみたいかも。



い、いや、絶対ペアは嫌だけど!!



花火大会は明後日の夜だ。


明日、誘えるかな?

勇気出せるかな?


不安で不安で、しかも暑くて寝苦しくて、夜はちっとも眠れなかった。

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