太陽の君へ
「…無理なら、いいよ?話したくない事だろうしね」
そう言った夏美は瞳を悲しみで染めた。
なんだかそれに私も悲しくなった。
夏美は二年ほど前、私にここに来た経緯を話してくれた。
別に興味があった訳でも詮索した訳でもないけれど、なぜか夏美は自分から打ち明けた。
寒さで凍えそうな夜だった。
放任主義の親から愛情を感じられず、寂しさに押し潰されそうになった時、たまたま行ったクラブでクスリと出会った。
最初は興味本位だけだったが、次第には無くてはならないものとなり抜け出せなくなっていた。
そして路上で服用しているところを通りかかった警官に見つかり、遂に捕まってしまった。
そして長いようで短い審判を終え、ここにやって来たらしい。
「夏美はもう、話してくれたもんね」
「話してくれるの?」
「うん。別に隠すような事じゃないしね。それに夏美だし」
そう言い微笑むと、夏美も嬉しそうに笑った。
私は話し出す前に、また向日葵に視線をやった。
相変わらず向日葵は太陽を向いていた。