バナナの実 【近未来 ハード SF】
ニアンは早々に毛布に身を包み寝てしまい、眠気の無い辻は、テレビをかける。
しかし、面白い番組がなく手持ち無沙汰(ぶさた)になった彼は、再びガンジャを吸うことに決めた。
テレビの前でいつもと同じ作業をし、何度か吸っているうちにパイプがつまり、上手く煙を吸うことができなくなる。
パイプ掃除のため洗面所とテレビの前を数往復。
足が少しもたつき、すでにガンジャがキマりだしてイイ心地になっていた。
洗面所から出てテレビの前に歩を進めようとすると、ベッドで寝ていたはずのニアンと目が合った。
けれども、彼女は、横になったまま、すぐに視線をそらす。
強張(こわば)った面持ちで、ずっと遠くにある焦点の合わぬものを見ているようだった。
それが凶兆(きょうちょう)だとは思いもしない辻は、ちょっと気になる程度に黒いシミを抱えながらも、そのままガンジャを吸い続けた。
しばらくして、ベッドから勢いよく飛び起きたニアンは、耳をつんざく声ときつく鋭い眼光で「▽→⊃♯かお☆∀∠⊥√♀←◎!」と、罵倒する勢いで辻を指差し怒鳴りつける。