バナナの実 【近未来 ハード SF】
辻は、ニアンの表情を確認しながら、マニーが訳すのを待って一文一文読み進めた。
「君は僕にとって特別な存在。
君の心は、他の子とは違う。
僕は誓って言える。
君の事は、日本に戻っても決して忘れない。
たとえ十年の歳月が経ったとしても、たとえ僕が六十歳になったとしても」
「ニアン、この言葉の意味わかる?」と彼が尋ねると、口元をほころばせて頷いていた。
「この前、マニーっていう子と親しくなって、ニアンの事たくさん話したんだ。
僕には、マニーのベストフレンドは君なんだと思った。
僕より君の方が知っていると思うけど、マニーはいい子だよ。
どうか彼女のことをいつまでも大切にしてあげてね」
照れたのか本当に疲れたのか、「もういいじゃん」とごねるマニーを励ます。
「時々、君の事が心配でたまらなくなる。
踊っている時、どうしてそんな悲しい顔を見せるのだろうって。
遠くを見つめ、心ここにあらずって感じだ。
今日、君が笑っている姿を見ることができた。
その笑顔を見た時、とても幸せな気持ちになれるんだ。
もう一度、ありがとうニアン」