バナナの実 【近未来 ハード SF】
すべてを読み終えると、英語で書かれた手紙を彼女に渡し、マニーに礼を言った。
テラスからはオレンジ色の朝日が昇り、それは、二人の門出を祝しているかのようだった。
二人にカウンターで食事を取らせている間、辻は、しばらくエリックと会話する。
あごを少し上げたエリックの問いかけに辻が軽く三度頷くと、すべてを理解したような笑みをたたえた。
日差しが強くなりかけた頃、辻は、帰宅することを伝える。
「もう行くのかい?」
「うん、もう朝の六時半だよ」
「そうかい。ボクはまだいるよ。それじゃ、また明日!」
「エリック、今夜は、大会でしょ。だから、また今夜だね」
今夜、週一回開かれるバー主催のビリヤード大会があった。
辻は、この半年で優勝1回、準優勝3回、三位を4回獲得するまで実力を上げていた。
ゲームの基礎を教えてくれたやすのことは、いつまでも変わらず彼の中にあった。
「そうだった、お互い頑張ろうぜ! 今夜は、二人で決勝対決がイイねぇ」
「そりゃ、いいアイディアだ! じゃ、おやすみ!」
笑顔で握手を交わした辻は、カウンターへ向かう。
ニアンとマニーは、トースト、ベーコンと目玉焼き、豆のスープを二人して食べていた。
ニアンが辻にも食べるよう勧めると、豆のスープとトーストを一口もらいマニーに尋ねる。
「ところで、『アーモック』ってどういう意味?」
「誰が言ったの?」と目を大きくして、不思議そうな顔をする。