バナナの実 【近未来 ハード SF】
第18章 全裸事件
■ 第18章 全裸事件 ■
ちょうど昼ごろ起きた辻が部屋代を払いに階段を降りて受付に行くと、日本人男性がチェックインの手続きをしていた。
「エッ? あー、・・・」
歳は辻より少し若く見え、一般旅行者のようだ。
「どういう部屋を探しているんですか? エアコンは入りますか?」と、英語が苦手なようで通訳をかってでると、それがきっかけで親しくなり、近くの大衆レストランで昼食をとる事に。
彼の名は、佐々木潤、30歳。
二度目の海外旅行で、これから半年かけ、カンボジア、タイ、ラオス、インド、ネパールを周る予定だと言う。
働きながらプロボクサーを目指していたが挫折、それがきっかけで今回、しばらく海外に出ようと思ったらしい。
辻は、自分も同じような経験があることを、ガンジャの話を除いて、ありのまま明かすように話した。
お茶の会社を続けていても、成功しないことは本人も分かっていた。だが、何をどう変えて、何から始めたら良いのかさえ分からないまま、日々、煩悶としていた。
大学同期の友人たちは、皆、卒業と同時に就職。今では皆結婚して、家族を持ち幸せそうだ。
何千万円もするローンを組んで家を購入した話を聞くと、つい今の自分と比較してしまう。
やっぱり就職した方が良かったのだろうか?
そんな言葉が一瞬脳裏を過ぎるが、不思議と過去の選択に後悔の念はない。