バナナの実 【近未来 ハード SF】
大麻について自分より詳しいと思った辻は、大麻と犯罪発生の関係を尋ねると彼なりの考えを口にした。
「大麻”と“犯罪”の関係って、“携帯電話”と“イジメ”の関係に例えられと思うんですよー。
もともとイジメがあった所に、携帯電話の普及とともに学校裏サイトを利用したいじめが強調されているのであって、携帯電話そのものが悪い訳じゃないじゃないですか。
同じように、大麻自体が悪いんじゃなく、犯罪がある環境に大麻が見かけの強調をしているっていうか。
だから、携帯電話がなくなってもイジメがなくならないように、大麻がなくても犯罪はなくならないと思うんです」
大麻と犯罪発生はそれほど関係なく、あるのは、純然たる健康害と精神作用の大きさが問題なのだと、佐々木はいう。
辻は、学校で先生の授業を聞くように、彼の話に納得してしまった。
佐々木は、そんな話を交えながら、ジョイントと100円ライターを辻に勧める。
「ごちになりま~す!」
礼をいい、ジョイントをくわえ先に火をつけた。
「うわっ! 煙が濃い。やっぱりパイプで吸うのとは、一味違うね。ネタもこっちの方が断然イイし」
甘い干草のような、鼻を貫(ぬ)ける香りも最高だ。
彼は、ゆっくり二度吹かし、火のついたジョイントを佐々木に手渡す。
佐々木は、辻が心配する勢いで、タバコのようにスパスパ吸っていた。
次第に部屋は、煙が充満し視界が少し悪くなると、佐々木から再びジョイントが回ってきた。
辻が二服すると、一分もしないうちに頭が揺らぐ変化が現れる。
「来たねぇー。イイ感じ~」
辻は、温泉にでも入っているようなゆるい声を出す。