バナナの実 【近未来 ハード SF】
一方で彼は、ほぼ毎日カジノに通い、全裸事件の晩に考えついた方法を実践する。
いきなり100万円をつぎ込むのは危険だと思い、資本金は1000ドルからに。
その結果、一ヵ月間の収支は、450ドルのマイナスとなった。
1200ドル近いプラスを見込んでいたのに、なかなか上手くいかないものだと実感する。
それでも、毎日の充実した食事には満足していたので通い続けた。
彼は、一日の食事である昼食と夕食をカジノのレストランで取っていた。
そこの中華は味が上品で、特に麻婆豆腐は天下一品。
渡り蟹のオイスターソース炒めやエビチリなどの海鮮料理、サラダバー、カットフルーツの種類も豊富で、一食10ドル相当の品揃えがあった。
仮に、一回10ドルで計算すると月の食費が600ドルとなり、ガジノのマイナス分とほぼ相殺(そうさい)される。
つまり、代金を払ってレストランで食事しているのと変わらなかったのだ。
この一ヵ月間、実践してはっきりしたことは、7回連敗する日が三日に一度必ずある、ということ。
辻は、二人一組で調子の良い方に掛けさせることで、これを克服しょうと考える。
ちょうどその頃、デパートやナイトクラブで一緒に過し、気心知れたニアンとマニーのうち、マニーをカジノの相棒に選んだ。
英語で意思の疎通がしやすいという、単純な理由からだった。
彼の誘いに乗ったマニーと、毎日、カジノに通い、彼女とカジノに行っていることは、あらかじめニアンには話していた。