バナナの実 【近未来 ハード SF】
「あー、三連敗かぁ・・・」
辻は、自分の運が悪い時、マニーに賭けを預けた。
すると、不思議と勝ちを連発。
逆にマニーの調子が悪くなると、代わって辻が賭けた。
12日間の収支は、マニーに報酬を払うとプラス60ドルに。
初めての黒字で、この方法は、確かに上手くいった。
だが、すべてにおいて万全というわけではなかった。
マニーとカジノ場に来るようになり、彼女の自分に対する接し方が変わったと辻は感じていた。
彼女は、辻の耳たぶを触ったり、足のすね毛を引き抜こうとしたりしては、「くすぐったい?」と無邪気に甘えた声を見せる。
まるで恋人気取り。
それに鼻をつまむ様な嫌気をさしていたが、カジノの成績は上手くいっていた。
だから、彼女に機嫌を損(そこ)ねられては困ると思い、曖昧(あいまい)な対応を取っていた。
カジノで大きく負け込んだ晩、帰りの時間が遅くなってしまったことがあった。
「家の門限を過ぎてうちに入れないから、今夜は泊めて」とマニーに言われる辻には、寝耳に水。そんなことがあるのかと疑心暗鬼(ぎしんあんき)を生ずる。
「だから私、いつもバーで朝まで過しているのよ」今にも泣きそうな声だ。
そう言われるまで気が付かなかったが、マニーはいつも自分より先に帰ったことなどなかった。
彼女にせがまれ急に責任を感じた彼は、やむなく自分の部屋に泊めることにした。