バナナの実 【近未来 ハード SF】
宿まで連れてくると、「疲れたから寝たい」というマニーを部屋に置き、辻は、ニアンに会うためナイトクラブへ出かける。
ニアンに変な誤解を持たれることを恐れた辻は、彼女に会うなり、不可抗力で無実の罪人に仕立て上げられた内実を話す。
その晩、熟睡しているマニーをツインベッドの彼方(かなた)に、辻とニアンは、窓側のベッドで静かに肌を重ねたのだった。
翌日も同じカジノが理由でマニーの門限を過ぎてしまい、ベッドで寝ている彼女を部屋に、辻はクラブへ。
そして、ニアンに会うと、すぐにマニーのことを話した。
彼女は厳しい表情をして少し気を悪くしたが、二人は、クラブとバーをいつものようにはしごして夜を明かした。
その日、疲れていた辻は、一人で帰ることをニアンに伝え帰宅。
翌日、クラブでニアンに会うなり、「もう、マニーと会わないで!」とヒステリックな雄叫(おたけ)びを上げ声を辻の胸に突き刺す。
辻は、ニアンが自分の気持ちを理解しているものと思い込み、それは一時の不満だろうと思った。
何もやましいことが無いと思っていた彼は、マニーをカジノに連れていく理由と、自分が好きなのは、ニアンだけだということを繰返し、彼女の言葉をあまり気にかけなかった。
それからさらに数日が過ぎ、マニーの辻に対する態度はエスカレートを増していった。
「アーモック、感じる?」と上ずった甘い声で、座っているテーブルの下を這って腿(もも)に手を伸ばす。
ところが、カジノのレストランでマニーと食事をしていると、それまで明るかった彼女の表情が陰り、重そうな口を開く。
「私・・・、リンと絶交したから! もう絶対、許さないんだから!」