バナナの実 【近未来 ハード SF】
「マニーと仲直りしてください。僕は、誰が一番不幸せか考えたんだ。
それは、マニーだよ。
ニアンと僕は、一人の友人しか失わないけど、マニーは、一度に二人の友人を失う。
僕のことは、もういいから、以前のようにマニーと二人仲良くしてほしい。
彼氏や彼女は簡単に見つけることができるけど、親友はそんなに簡単じゃないよ。
特にマニーのような子はね。
彼女は口で怒っていても、今でもニアンのことを心配している。
彼女は、君が謝りに来てくれるのを待っているんだ。
僕はニアンが素直な子だって知っている。
だって、僕が愛した人は、ニアンなのだから」
「ありがとうマニー。今夜、彼女にこの手紙を読んでみる」
辻は、そう言うとマニーと別れ、宿へ戻っていった。
その深夜、電話でニアンをバーの二階に呼び出した辻は、現れた彼女を人気のない薄暗いテラスへ誘う。
さっきまで止んでいた冷たい雨が、再び、シトシトと辻を静かに責め立てるような音を立て降り出した。
「なに? アモック!」とテラスの壁を背にしゃがり込む。
「これから手紙を読むから、怒らないで最後まで聞いてくれる?」
「アウ!」ふて腐れ、いらついた返事。
チノパンのポケットから三つ折になった手紙を出すと、ニアンの前で読み始めた。
「クニョム マン ロープ・・・」