バナナの実 【近未来 ハード SF】

辻は、自分の小説が本当に売れるかどうか不安だったので、試験的に自身のブログとオークションサイトで宣伝し販売を始める。


小説の定価は、1600円であったが、送料と振込み手数料を考慮し、お客様には、1600円で商品の小説を受け取れるよう配慮。


これにより、書店で購入するのと変わらない価格設定にした。


ケータイ小説とブログの読者を合わせると、およそ2万人近い読者ファンがいると言われていた。


小説の記事変更内容はウェブ上で公開されていたし、所詮(しょせん)無料で読めるのだから、それらの読者がわざわざお金を払って小説を購入するとは思えなかった。


しかし、辻の予想に反して読者の一部が、まるでファンアイテムでも購入するかのように彼の小説を注文していた。


あっという間に初版の1000部は完売し、増刷となる。


商品発送する手間を節約するため辻は、通販サイト大手であるアマゾンドットコムと小説の委託販売契約をおこなった。


そして、節約できた時間で、読者から寄せられるコメントやブログ運営に力を注いだのだった。


これらの経緯がブログ上で公開されると、読者から書評が多く寄せられるようになり、同時に、アマゾンの書評レビュー書き込みも充実。


また、辻のブログとリンクしているごく一部の常連たちは、アマゾンのアフィリエイトプログラムを利用し、各自のブログサイトで辻の小説を紹介し始めたようだ。


アフィリエイトとは、サイトに掲載されたリンクを辿(たど)って商品が売れた際、そのサイト管理者に紹介手数料が支払われる仕組みのことである。
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