バナナの実 【近未来 ハード SF】

「テラセンって何ですか?」辻が尋ねる。


「賭け金に対して、胴元が取る金額のことだよ」

須藤は、宝くじで約50%、競馬25%、バカラ2.5%くらいのテラ銭があることを辻に教えた。


辻は、手数料があることは知っていたが、テラ銭という言葉をこのとき初めて知る。


「日にどれくらいの金額を回すんですか?」


「平均したら10万円くらいですかねぇ」辻は、頭の中で少し計算してから答える。


「すると、月に300万円回す計算だから、7.5万円を無条件に店側に払っているわけ。ホテル代と食事代も加味すると・・・、月18万円くらいの出費になるでしょ」と身振りを交えて須藤は説明した。


彼は、その、月18万円を差し引いてプラスマイナスゼロでやってきたのは、セミプロ並みだと辻を褒めたのだった。


それを聞いてなんだがすごい気がしたが、利益がでなければ意味がないと考え直す。


「ある人に倍々で掛け金を上げるのは良くないって言われたんですが、それはどうなんですか?」


「あ~あ、一般には、カモがネギしょってくるって言って、ガジノ側の思う壺だって言われているね」


「やっぱりマズイ掛け方なんですねー。バカラの必勝法かと思って実践中なんですが」


「でも、それでプラマイゼロならホントすごいよ。大抵、みんなマイナスだから。


博打(ばくち)する人って何回も賭けるでしょう。すると”大数の法則”っていうのがあって、だいたい期待値に落ち着くんだよ」


ビアジョッキの底を辻に向ける須藤に、期待値について尋ねる。


「要するに100掛けたら、いくら戻ってくるかっていうこと。競馬・競輪は75、バカラは99.75くらいだったかなあ。


だから、1万円賭けるとだいたい競馬なら7500円、バカラで9750円戻ってくるんだよ。もちろん、100とか1000回という回数を賭ける条件でね」
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