バナナの実 【近未来 ハード SF】
第25章 共同作業
■ 第25章 共同作業 ■
辻の小説がリアル書店で販売されるようになってから数週間後、ブログでは、ある記念すべき数字がネット上を賑(にぎ)わせた。
ひとつの目標であった小説販売部数が、50万部を突破したのだった。
商業出版による出版社と著者の印税契約は、通常8から10%。
単価1600円の本が50万部売れた場合、著者の受け取る印税は、約8000万円。
しかし、辻は、アマゾンとの委託契約上、一冊900円の利益があった。
自費出版とは、そもそもハイリスク ハイリターンなのである。
こうして彼は、小説のシナリオ通りアマゾンとリアル書店との契約に基づき、約4億円を手にすることに成功する。
この事実は、小説シナリオをさらに現実に近づけることに。
小説には、あらかじめ、『小説の売り上げ4億円を資本金に映画化』ということが明記されていたからであった。
辻は、監督や出演するキャストさえも決まっていなかったが、この小説のシナリオ通り自身のブログの中で、すでに出版されている小説『セカンド ソート』を原作とする映画化を発表する。
この数ヵ月、辻や各読者が運営するブログで議論された内容は、小説出版前のそれとは随分(ずいぶん)異なっていた。
以前同様、シナリオの細かい指摘や、内容自体の賛否両論は続いていた。
だが、その一方で、映画化に向けた議論がなされるようになっていたのである。