バナナの実 【近未来 ハード SF】
・・・、すると世の中には、偶然ということが無くなってしまうのか?
よく『偶然だねえ』とは聞くが、実は必然だったのではないか・・・?
ある出来事を起きた後で思い直すと偶然になるが、もしそれを事前に知っていたら必然になる。
そんな説明でよいのだろうか・・・?
偶然を別の言葉で表現すると、“予期せぬ出来事”だ。
ある出来事を主観が予期すれば必然になり、予期しなければ偶然と言える。
もしそうなら、『バナナの実がそこに生(な)ったのは偶然だ』と言うのは、主観が予期していないから偶然と言っているのであって、主観が予期すれば必然となる。
客観的には、どうなのだろう?
ある出来事を客観が予期すれば、必然になり、予期しなければ、偶然と言える。
『バナナの実がそこになったのは偶然だ』と言うのは、客観が予期していないから偶然と言っているのであって、客観が予期すれば、主観同様に必然となるわけかぁ・・・。
ただ単に、小説の中で自分がお金持ちになる。
50億円という大金を手に入れる内容の小説を書いたとしても、普通、そう簡単に現実の世界で実現しない・・・。
そんなんで大金を手にすることができるなら、すでに誰かが、その方法で大金を手にしているはずだ。
“その方法”とは・・・。
では、どうして今までそんな人が現れなかったんだろう?
バナナの実がなる小説を書いていないから?
・・・、暗く湿った隠微(いんび)な人情を持つ井戸の底を覗き込み、螺旋階段のようなどこまでも降りていく自問自答を反芻(はんすう)していた。
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