バナナの実 【近未来 ハード SF】
第27章 理想郷
■ 第27章 理想郷 ■
日本で劇場公開された映画『セカンド ソート』は、出版された小説とは4割ほど内容が異なっていた。
小説を映画化する場合、ストーリーを単にそのままフィルムに焼いただけでは、ろくな作品に成りかねない。
映画とは、それにあった形に再構築する作業が必要なのだ。
映像化に際しては、小説出版から映画化までの間に起きた様々な出来事が、正確に描写され反映される。
そして、脚本家や監督の手腕が十分に発揮され、辻が描ききれなかった世界観が豊かに表現されていた。
バンコクのドミトリーで出会い、助言をくれたアキラのアイディアも、最終的には取り入れられていた。
こうして映画『セカンド ソート』は、当初出版された小説に比べれば、だいぶ完成型に近づく。
裏を返せば、出版された小説のシナリオが着実に現実世界で実現していたのである。
上映前恒例の製作スタッフ一同による劇場挨拶風景はユーチューブでも公開され、映画の反響は、上々の評判と見て取れた。
映画業界では、週末の観客動員数から最終的な興行予想を、20億円と試算。
辻は、もう少しよい数字を期待していたが、商業的にはギリギリの成功に留る見通しだった。