バナナの実 【近未来 ハード SF】
数ヵ月後、その言葉が物語るように、競争にならないことを悟った辻は、アンナ・K のウェブサイトの翻訳を自身のブログで公開し、その行方を見守ることにした。
一方、日本映画『セカンド ソート』の週間ランキングは第一位を獲得したことも追い風となり、最終的な興行収入を22億円とした。
結果、映画興行までに投じた9億円を回収できたものの、興行と配給会社という契約上の棚田を降りてくると、カエルの小便ほどの利益が残るに留まる微妙な興行成績だった。
その後、海外に映画の放映権を売り、国内セルDVDの売り上げやCS・地上放映料など、2次使用からも利益を上げる。
最終的に小説売り上げとの収支を計算すると、辻の手元には10億円が残った。
こうして辻は、50億円とはいかなかったが、初めに書かれた小説のシナリオ通り日本で映画化を果たし、10億円を手にしたのだった。
いわゆる成金となった彼は、目標を失ったことでそれまでの冷静さまでも失ったかのように、欲望のまま突っ走る行動を起こした。
まず、ラスベガスへ行き、1億円の資金で今までのカジノ累積負債150万円をチャラにし、ギャンブルから足を洗う。
続いて、最新モデルのフェラーリ、BMW、アウディーと欲しい外車を全て買い揃え、紺碧の海が望める丘に白い邸宅を購入。
日々の生活といえば、海外旅行にゴルフ三昧で、勝手気ままな時間を失われた30代の生活を取り戻すかのように過していた。
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