バナナの実 【近未来 ハード SF】

アキラは以前、夢を語ったことがあった。


「 ―― 僕、将来、チャイ屋さんをやりたくて。インドから東へ向かうと、お茶の飲み方が変化するんです。


インドでは、紅茶に砂糖とミルクを入れますが、西に向かうにつれ次第にミルクがなくなり、砂糖は入れずに口に含んでから紅茶を飲むようになるんですが、そういういろんな国のお茶を出すお店です」


「へぇー」


でも、お店を開くならチャイだけではダメで、写真と合わせてお店を出そうかと。


写真は、その見せ方で何か創造的な方法で表現したいと思っていますが、まだ具体的には見つかってなくて。


辻さんが言っていたように、点がいくつか頭の中にあるけど、まだそれらが結びついていないんでしょうね。


きっと、もっと多くの点を見つけていけば、いつかその創造的な表現方法も見つかると思います。


これからは、発想力や創造力がとても大切になってくると思うんです。人はみんな、トリップが好きですから」



「なるほど、日本人に限らずみんな旅行は好きだもんね。

それから、トリップと言うと、草吸う奴はトリップが好きだから吸うんだろうね」と茶目っ気たっぶに辻が言った。


「ええ、僕がチャイの店を開くなら、お客が店の扉を開けたらトリップできる空間を作らなきゃならないんです。


ルイヴィトンなんかの高級店は、そういう空間がすでに出来上がっていて、だから多くの人に支持されているんです」


「なるほどねえ。僕の場合、もし小説で成功したいなら、読者を異次元に招待できなきゃいけないわけかぁ」


「そうだと思います」
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