バナナの実 【近未来 ハード SF】
辻は、また機械的に3200バーツ(1万600円)をバンカーに掛けると、二枚それぞれ配られた時点でプレイヤー5、バンカー4。
プレイヤー側の中年男性がディーラーに配られた三枚目のカードを一気にめくると、それはハートの8だった。
プレイヤー三枚のカード合計は、13なので3となる。
1から5、または10以上で勝ち、6から8で負けという組み合わせに、うさぎのように宙を跳ねる辻の躍動がプレイヤーの勝ちを祈る。
バンカーに三枚目のカードが配られると、それは7だった。
1に下がったテーブル上のバンカーを見て、大きなどよめきがあたりを包む。
6連敗の掌(てのひら)は、危険から身を守るように大量の汗をかき、足の裏でさえそれで滑ってきた。
縄をつたう足の指で踏みしめると、ヌルヌルとするサンダルが気持ち悪い。
辻が前の席に座ってス人のスコアカードに目を落とすと、下へ一列に突出して伸びる13の青い印は、奇怪な図形模様を描いていた。
次に掛ける方を、プレイヤーに変えてみようか・・・。
だが、迷う内なる囁(ささや)きに従うことなく、バンカーに再び6400バーツ(2万1000円)掛ける。
左手に握られたチップは、掌と接する所だけ再び汗をかいていた。
それぞれにカードが配られた時点で、スペードの K、ダイヤの Q、・・・と四枚の絵札がテーブルに並んでいた。