バナナの実 【近未来 ハード SF】

辻は、ガンジャを吸う人から、こんな話を何度となく聞いたことがあった。



『アメリカは、はじめに貧困と経済格差があって、犯罪が増加したんだよ。政府は、その改善策に失敗し、その責任を大麻に押し付けたのさ。


そして、大麻がはびこっているから、犯罪が減らないんだって主張したんだ。でも、そんなの嘘っぱちさ。もともと犯罪率の高いところに大麻が広がったのさ』



『カナダやオーストラリアは、資源が豊富で国自体が豊かなんだよ。逆に日本は、資源に乏しく国民の生産性が高くなきゃ、経済を維持できない。


大麻を吸うと生産性が下がるからな。あと、アメリカの圧力だな。大麻から取れる繊維が、化学繊維産業発展の妨げになるから』




「たったそれだけ・・・?」


辻は、意外な理由に拍子抜けしたことを覚えている。


その国で禁止しているのは、それぞれ事情があるのだから法律に従うのは当然だと思ったが、以来、何が真実なのか知りたいと思うようになっていた。


そんな思いが、子供のような疑問を二人にぶつけていた。


「ガンジャ吸うと、どうなるの?」


「キマると、とりあえず動きたくなくなるね。って言うか億劫(おっくう)になる」


「音が綺麗に聞こえてねぇ、食べ物も激ウマに感じるねぇ。もうハッピーになれるよ」


難しい表現や単語は何一つ無い亮とジロウの言葉に、その言っている意味や感覚が日本語ではないかのようにさっぱり理解できなかった。


音が綺麗に聞こえるって、どういうことよ?


食べ物が美味(うま)いって、美味(おい)しいものは、美味(うま)く感じるものなんじゃないの?と、1+1=3と言われる気分だ。



ジロウがガンジャを詰めた、小さいステンレス製の水パイプを福井に渡す。
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