バナナの実 【近未来 ハード SF】
いつも色違のスキニーなジーパンで、髪はロングのストレート。
たまに軽いウェーブをかけ、目が大きくパッチリしていて特徴ある眉は、日本人女優にいるタイプにも見えた。
何度か目は合うが、辻はすぐに目をそらす。また、彼女もそっけないので話すきっかけが見つからない。
辻は人見知りする方なので、なおさらだった。
場馴れしている連中なら、すぐ彼女と一緒に踊るのだろう。
実際、黒人や白人の男性たちは、意中の女性と腰を重ねとても楽しそうだ。
たいてい辻は、そんな彼らを羨ましそうに見ているだけである。
他にも何人か、好みの女性はいた。
彼女らと一緒に体を寄せ合い踊る自分の姿を、カウンターの椅子で片肘をついて空想する辻。
Sarah ConnorのBounceに合わせ、激しく踊る小柄な女性が、大きな鏡の前にある一段高いステージの上で一際(ひときわ)異彩を放っていた。
踊りは上手いのだが、時々、リズムのテンポが変わり、それが一見下手に見える。
だが、よく観察していると、そのイケてない踊りをある周期で組み合わせているので、全体としては、かなり弾けて見えた。
辻は、それらの舞に惹かれるように、彼女たちの虜になっていった。