バナナの実 【近未来 ハード SF】
毎晩、クラブに浸った。
そのうち、わずかな時間、自分を偽(いつわ)っていたにすぎないのだと気付くのだった。
しかし、カジノギャンブルが止められないように、それも止められないでいた。
それらは、無意味な物で辻の体に開いた穴を一時的に塞いでいるようなもの。
よくよく自分の体を注視すると、変に穴ぼこだらけであることに気付く。
これらの穴を埋めようにも、何で、どのように埋めたらよいのか分からなかった。
こんな穴、服を着てしまえば他人には分からない。
でも、素(す)の自分には分かる。
他人には、何とでも言いつくろえる。
いい服着て、いい時計して、いい車に乗って、いい家に住んで、いい仕事をしていれば、誰にもバレやしない。
問題は服じゃない。
やっぱりこの穴を埋めたいと思った。
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