バナナの実 【近未来 ハード SF】

すると、店長が、意外なような当たり前のことを言った。

「まぁ、うちも商売やっているけど、自分の店だけ得するんじゃなくて、お客も得をするようなサービスを提供しないといけないんだよ」


辻は、その言葉に、何かと何かが繋(つな)がったようにハッとさせられた。


そうか! お店の経営も同じことなんだ。



自宅に戻った辻は、募金の実験と自身の小説を対比させてみた。


実験での四人の席を

”小説=著者”
”消費者”
”出版社”
”映画会社”

という要素で仮定。


”小説=著者”
”出版社”
”映画会社”は、”消費者”に商品を提供するのだから、まず、”消費者”の最大の利益を考えなくてはいけない。


”小説=著者”にとって、出版社と従来の契約で本を出版することは、小説の価値を下げた商品を消費者に提供することになり、最大金額の募金をしたことにはならない。


消費者は、価値の低い商品を読むことになるから、最大の利益も得ていない。


いわば、”消費者”が1000円募金し、

”出版社”
”映画会社”
”小説=著者”

が500円募金するようなものだ。
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