バナナの実 【近未来 ハード SF】
バスは、午後も平原の単調な一本道を快調に飛ばしているが、辻が暑苦しさで目を覚ますと、ニアンの具合がおかしいことに気付く。
車内の気温は一段と上がり、おでこに細かい汗を見せる彼女は、すでにぐったりしている様に見えた。
「大丈夫?」
声をかけても、目を閉じたまま気分悪そうに、あつい、と答えるだけ。
汗ばんだ額に手をやると、はっきり熱があると分かった。
そういえば朝から苦しそうに、咳(せ)き込んでいたっけ。きっと風邪だろう。
そう思いカジノベガスのホテルにチェックインすると、風邪薬を飲ませベッドで横にさせた。
午後7時、肩に軽く手を置き彼女に声をかける。
「ニアン、ご飯食べにいくか?」
「う~ん」と出るあくびを手で押さえ、寝たまま背を伸ばす様は、少し元気が戻ったようだ。
二人は、明るいポップな雰囲気がある、カジノダイヤモンドのレストランにきていた。
ここは、タイと韓国料理の品揃えが豊富で、平日のこの時間はあまり人がいない。
辻は、食べ放題であることを伝えると、彼女に陶器の丸皿とナイフにフォークを手渡す。
彼は、ご飯が盛られた皿に、アスパラ・人参・シイタケの中華炒め、骨付き鳥の唐揚げ二個、芋・鶏肉・インゲンの入ったグリーンカレー、川魚の輪切りフライをきれいに盛り付けた。
続いて、別の皿を持ってサラダバーへ行き、キャベツの千切り、トマト、レタス、キュウリの輪切りを盛り、フランス料理のようにドレッシングを皿の淵(ふち)に回し席に戻る。