バナナの実 【近未来 ハード SF】
無地で灰色の絨毯がひかれた床にあぐらをかくと、目の前にA四サイズのフリーペーパーを広げる。
次に白い袋からガンジャと喫煙セットを取り出し、ジッパーのついた透明のビニール製小袋からガンジャの葉を適当に、その上に置いた。
BBCニュースが放送されている音の無いテレビの明かりを頼りに、丁寧に茎から葉を落とし種を除き、それらの葉を指先で少し揉(も)む。
そして、亮の置き土産である木製のパイプに詰め、ライターで葉に火を入れた。
すると、ガンジャの葉が
ボッ!
と勢いよく燃え、煙を肺に入れた。
パイプの中のガンジャは、赤い小さな炭のように中でくすぐっている。
再びパイプをくわえ吸い込むと、その小さな灯(あか)りが再び赤々と燃えたぎる。
草が全て白い灰になったことを確認すると、新しい草をパイプに詰め直し、再び火をつける。
パーン!
という軽い音と共に、パイプのなかから花火が空を舞った。
「熱っちィ!」
左の掌(てのひら)に花火の残骸が触れる。
なーんだ、種が入っていたのか・・・。
気を取り直して吸い直す。
この草は質が悪いようで、なかなかキマらない。
15分ほどしてようやく頭がボーとする中、テレビのチャンネルを変え面白い番組を探す。
音のないテレビでは、リングⅡが、また再放送されていた。
その映画の会話をほとんど暗記していた彼には、音がなくても十分怖かった。