バナナの実 【近未来 ハード SF】
映画を見終えると、すでにニアンは、寝てしまったように見えた。
辻は、シャワーを浴びてから腰にバスタオルを巻き、ベッドの中に戻る。
彼女は、いつものように、まったく寝息を立てず背を向けている。
辻は、彼女の後ろから着ているシャツの下に手を忍ばせるが、タイトなシャツがそれを邪魔する。
それに気づいたニアンが仰向けになると、辻の右手が彼女の背中とベッドの間に挟まれる。
身動きが取れなくなった手をゴソゴソさせていると、気を利(き)かせた彼女が体を弓なりに反らせる。
その夜、二人は、初めて一線を越え身体(からだ)を重ねた。
どれだけの時間、体を一つにしていたのだろうか。
いつの間にか体を寄せ合い、深い眠りの中にいた。
辻は、時々目が覚める。
そして、ニアンが隣にいることを確かめると、また眠りにつくのだった。
目が覚め窓のカーテンの隙間から差し込む強烈な太陽の光は、辻を昨夜の情熱から現実の世界へと引き戻す。
二人は、そんな非日常を二日過ごした。
プノンペンに帰る前夜、カジノが経営するナイトクラブへ繰り出したが、一時間もしないうちに「帰ろう」とニアンに言われた。
明日は朝一の便でプノンペンへ立たなくてはならなかったので、ホテルのフロントでモーニングコールをお願いして部屋に戻る。