思いがけずロマンチック

「ひとりで決めるには荷が重すぎるんだよ、それに女性陣の意見も尊重したいしね」


まるで取って付けたような理由は到底信じがたく、どうしても昨日の不祥事をごまかそうとする言い訳にしか聞こえない。
それに、また何か良からぬ事を企んでいるのかもしれない。


もちろん、きっぱりとお断わり。


「お任せします、私は営業の仕事があるので行けないので」

「ひどいなあ……、一緒に手伝ってくれるって言ったじゃない、じゃあ明日ならどう?」


それでもなお益子課長は引き下がろうとしない。ねちっこい声で体をくねらせて、私の机にもたれかかる。いったい何のつもりだ。


「無理です、出向かなくても貰ったパンフレットで決めたらどうですか? 立食だから細かいことを気にしなくてもいいと思いますよ」


語気を強めて跳ね返したら、さすがに驚いたらしい。益子課長は目を見開いて、肩を落としながら机から離れた。


「唐津さんは冷たいなあ……」


冷たくて結構。益子課長なら何と思われても気になるものか。
早々に無視して仕事に取り掛かる。有田さんの言っていた備品倉庫の整理に取りかからねば。


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