思いがけずロマンチック

朝から埃っぽい書庫に篭って書類整理。思っていた通り操作は難航した。段ボール箱はかなり古い物もあって持ち主の名前もわからない。中にはどう見てもただのメモだろうと思える物や、仕事に関係ないようなパンフレットだったり。既に退職した人の置き土産まであった。

結局持ち主が見つかったのは半分にも満たなかった。


ところが問題はその後だった。持ち主に書類を処分してくれるよう頼んでも、素直に引き受けてくれる人ばかりではない。忙しいから後でと言われては片付けることもできない。
最終的には、書類を確認もしないで要らないから捨ててくれと言われてしまったのが半分以上だった。


廃棄する書類を残して、なんとか午前中に作業終了。かなり体力を使う作業だったから疲れ切って自席へと戻った。


有田さんは来たのだろうか。
お弁当の入った紙袋を持って、役員室へと向かう。


何と言って渡そうかと考えながら、ドアを叩こうと手をかざす。ところがドアの向こう側から微かに話し声が聴こえてきた。


有田さんの声なのか判断できないほどの小さな声。役員室の中で誰かと話しているのか、電話で話しているのかさえわからない。


だけど今入っていく訳にはいかない、出直さなければ。ちょっとしたがっかり感を抱えながら自席へと戻る。


すると千夏さんが周りを窺いながら、小走りでやって来た。
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