思いがけずロマンチック
まだまだ私の押しが足りないのかもしれない。お弁当を楽しみにしてもらえるようにならなければ、ゲットなんてできない。
「こちらこそありがとうございます、書庫の整理はほぼ終わりました、残っているのは廃棄する物ばかりです」
「ありがとう。廃棄する時は手伝うから声をかけてくれ」
「わかりました、有田さんがいらっしゃる時に廃棄します」
手伝ってくれるなんて言うけれど全然期待はしていない。少し嫌味をこめたつもり。今日だってお弁当を渡したかったのに肝心な時に居ないから。何とかお昼までに渡すことができたから結果オーライだけど。
こうしてコツコツとポイントを稼いで、いつかきっと有田さんをゲットするんだ。
決意を新たに戻ろうとする私の腕を、有田さんが掴んで引き止めた。私が思わず後ずさったからか、有田さんは驚いたように手を離す。
何にもしないと言うように両手を挙げたまま顔を近づけてくるけれど、余計に怪しく見えてしまう。
ぐっと歯をくいしばり、肩に力を入れた。
「さっき益子課長に注意しておいたが、念のためしばらくは気をつけてくれ」
トーンを落とした声で早口で告げて、有田さんは離れていく。怪しいことなんて何もなく、力んでしまった自分が恥ずかしい。