思いがけずロマンチック
「おはようございます。織部さんこそ今日は早くないですか?」
「クライアントとの約束があるんだ、唐津はどうしたんだ? 朝メシ?」
私の手にアイスコーヒーと買い物袋があるのを見つけた織部さんが笑い出す。
たかが朝ご飯を買ってきたぐらいで、そんなに笑うことないだろう。それに朝ご飯をコンビニで買ったのは久しぶり。最近はお弁当を詰めた残りのおかずで朝ご飯を食べていたから。
「どうしてそんなに笑うんですか? あ、ちゃんと休憩室で頂きますから安心してください」
「それも大事だな、だけど朝からよく食べるよなあ」
笑いが止まったのはほんの一瞬、織部さんは再び笑い出す。私が提げた買い物袋を指差して。
「これは、お昼も一緒に買ったんです、こんなに食べられませんよ」
「だろうな、朝からそんなに食べるわけないよな、食べたらびっくりするよ」
ひと通り笑って満足したのか、ようやく笑うのを止めた織部さんが歩き出す。私も後に続いた。握り締めたアイスコーヒーのカップから伝い落ちてくる滴を蹴飛ばしながら。