思いがけずロマンチック
そしてメールの最後には私への指示がきっちりと朱記されていた。
『社員宛に歓迎会の案内を配信しておくこと』
『経営責任者さんに日時の連絡をしておくこと』
この二点が大きな太字で。粒々した黒いモノの集まりとはくっきりと浮いていて嫌でも目に飛び込んでくる。
これだけの長文のメールを書く時間があるなら、全社員宛にメールを書く時間だってあったはず。益子課長は上司だから反論すべきではないけれど、面倒な仕事ばかり押し付けられるのが引っかかる。
モニターから顔を背けて、両手を挙げて背伸びをした後に大きく息を吐いた。
私が有田さんに言いに行かなきゃいけない。
重い気持ちがのし掛かった体に気合を入れて立ち上がる。同時に役員室のドアが開いて、有田さんが現れた。
なんて、絶妙なタイミングなんだろう。