思いがけずロマンチック

ついにやってきたイベントの前日、朝から高ぶっていた気持ちを設営にぶつける。会場に入ったらすぐに備品の配置や段取りを確かめながら手帳を片手に駆け回るなか、緊張感がいい意味で背中を押してくれている。
幸い手配漏れやトラブルもなく準備は順調に進んでいく。


最後の仕上げのディスプレイに悩む笠間さんのお手伝いを始めた頃、有田さんがやって来た。当初の予定よりもかなり遅くに。しかも申し訳なさそうに謝る有田さんは珍しく息を切らせている。


「お疲れ様です、何かあったんですか?」

「本当にすまない、ここに向かう途中で急に本社から呼び出されたんだ」

「最近多いですね、毎日じゃないですか?」

「ああ、あちらの都合に振り回されてるよ」


最近有田さんが特に忙しいのは本社からの呼び出しがあるから。予定になくても急に本社から呼び出されることが多いし、予定に入っていたとしても時間の前倒しがあったり。


はっきり言って本社の予定に振り回されている。何かあったのか気になるけれども有田さんは事情を話してはくれない。だからこそ余計に気になってしまう。






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