思いがけずロマンチック
カメラ越しに映る笠間さんと九谷君はとても和やかな雰囲気。きっと九谷君が笠間さんのお客さんのひとりなんだと思う。
どうして九谷君なんかが……
納得できない気持ちで振り返ると、有田さんが綺麗な女性と向かい合っていた。
線が細くて背が高くて芯の強そうな大きな目が有田さんをまっすぐ捉えて、真剣に何かを伝えようとしているらしい。親しげにも見える彼女の表情を避けるように時おり有田さんが視線を外す。その時僅かに彼の表情が曇ったのが気になった。
彼女と有田さんに面識があるのは誰が見ても明らか。胸がぞわりと揺らぎ始める。
「心配は要らない、彼女は僕の婚約者だよ」
耳元に飛び込んできた不快な声。いつの間か隣に九谷君がいて、口元に笑みを浮かべながら私を見下ろしている。
『ここに来たのは商談のため』と言っていたのに婚約者を連れてくるなんてどういうことだ。
ますます苛立ちが湧き上がってくる。
「仕事に同行ですか? 心配するのはあなたの方じゃない?」
距離を置いて睨み返したけれど九谷君は動じない。それどころか私に顔を近づけて、まだ何か言いたそうに口元を揺らしてる。見下すような目つきで。
「俺は忙しいんだ、彼女が彼と何話しているのか気になってるんだろう?」
彼の表情よりも、言葉はもっと気に入らない。