思いがけずロマンチック

「状況って何ですか? お昼に出かける用事でもできたんですか? それともどこかに出張ですか?」

「そうだ、明日からしばらく午前中は外出することになったんだ」

「わかりました、仕方ないですね」

「本当にすまない」


有田さんの伏せた目には一瞬だけ、心から申し訳ないという気持ちが見えた。


すんなりと引き下がるのは正直なところ腹が立つけれど、外出するというのなら引き止める訳にもいかない。


きっと本社からの呼び出しか何かだろう。立場上呼び出されたら否応なく従うしかないのが悲しいところ。せめて良い用事で呼び出されていることを願うばかり。


「ありがとうございました、失礼します」


とりあえず退散しようと一礼。
すると、荒っぽくドアの開く音が聴こえた。


「有田さん、こんな所にいたんですか、探したんですよ」


大きな声でずかずかと歩いてくるのは益子課長だ。探していたと言うのに困った様子でもなくにやにやと口元を緩ませて。対する有田さんの表情はどこか固いのが気にかかる。



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