思いがけずロマンチック

「もしかして出社拒否？　いい歳して恥ずかしい」


千夏さんの呆れた顔が私の苛立ちを散らしてくれようとするけれど、それぐらいじゃ収まらない。早く吐き出して、早くぶつけてしまいたくてウズウズしてくる。


「たぶんね、察してるんですよ」

「逃げてるのね、男らしくないなあ……何の連絡もないの？」

「メールの返信はあるんですけど、電話は一切繋がらないんですよ」


一応益子課長は総務課の課長で私の上司。何かと許可を得ないたり指示を仰がなければいけないことだってあるというのに、私から電話をしても一切出てくれない。


留守電にメッセージを残しても掛け直してくれない。本社に電話しても然り。会議中だから、外出中だから、等の理由で取り次いでもらえないし伝言しても返ってこない。


仕方なくメールを送信したら、ようやく返ってきたのは用件だけの短い文章。その中に直接書かれていないけれど『自分は忙しい』と主張しているのが見て取れる。


私とは関わりたくないと言いたいのが明らかだった。


もちろん私が抗議するとわかっているから避けているに違いない。