思いがけずロマンチック

溢れるモノを抑え込むように、スマホに残った千夏さんの名前に触れた。


なかなか出ないから切ろうと思った頃、電話が繋がった。


聴こえてきた声は力なくか細い声で、寝ていたところを起こしてしまったのかと思うほど。焦って電話を切ろうと謝ると逆に千夏さんが平謝り。間違えて電話をかけてしまったのだと言うけれど声は弱々しくて、いつもの千夏さんとは違う。


ふと声が途切れて、小さなため息が聴こえた。遠ざかっていくため息に代わって、沈黙と重い空気が押し寄せてくる。


「千夏さん? どうしたんですか?」


堪らずに問いかけた。
沈黙の奥から千夏さんの息が漏れる音が聞こえて、またひとつため息。


「ごめん、気にしないで……」


何にも言おうとしないまま、掠れた声は消えてしまう。気にせずにいられるわけないし、もう黙ってはいられない。


千夏さんが何かしら良くないモノを抱えこんでいるのは明らかだった。





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