思いがけずロマンチック
千夏さんと織部さんはずっとお互いを思い続けていたし将来のことも真剣に考えてもいた。当然二人は結ばれて幸せな家庭を築いて……
どう考えてみても今さら性格の不一致や喧嘩別れなどではない。
何か他に要因があるはず。
「どうして……?」
戸惑いつつも問いかけた。
答えを聞くのが怖いと思ったけれど。
「今のままで付き合っても先が見えないから……一度距離を置いてみようって」
「そんなこと……千夏さんたちには必要ないです、二人で将来を見据えていたじゃないですか?」
「あの規則がある限り、どちらかが会社を辞めるしかない。私たちが将来を考えたら選択肢はそれしかない。でもね、その選択が本当に正しいのかさえわからなくなるの……」
確かに千夏さんの言う通り。
千夏さんたちが描いていた未来には、会社を辞めるという選択肢は元々なかった。降って湧いた選択肢を選ばさるをえないことに迷いがあるのだろう。
ふたりの理想を、進むつもりだったはずの進路を封鎖されてしまった今は簡単に軌道を修正することはできないのかもしれない。