思いがけずロマンチック

すると、穏やかだった有田さんの表情が曇っていく。疑いではなく怒りを滲ませた目で私を見据え、ゆっくりと顔を近づけてくる。


「この会社を預かった責任を全うしたい、ひとつずつ問題を解決して良い方向に変えたい、織部や美濃のことも後押ししたい」


待ち望んだ言葉に胸が高鳴り始める。


「本当ですか? もちろん私も協力します」


「ありがとう、俺もいつまでもお前の上司ではいたくない」


と言いながら、有田さんは今にも鼻先同士が触れそうな距離に迫ってくる。距離を保とうとして椅子を後ろに滑らせるけれど、有田さんが肘掛けを掴んでいて動かせない。


「それは……どういう意味ですか?」


「お前の答えを知りたい。俺は唐津莉子、お前が好きだ。上司としてではなくお前のそばに居たい」


胸の高鳴りが一気に加速し始める。
思いがけない言葉。
だけど密かに待っていた。


有田さんの鼻先が私の頬に触れた。


「私も有田さんが好き、上司としては厳しいと思うこともあるけど力になりたい、私が部下じゃなくなってもずっとそばに居てほしい」


不思議なほどすらすらと言葉が溢れ出す。


これからもいろいろな困難があるかもしれないけれど、有田さんと一緒なら乗り越えていける。私は有田さんを全力で支えていきたい。


決意とともに目を閉じると温かな鼓動。
有田さんの力強さに永遠を感じた。





ー完ー





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