思いがけずロマンチック
「彼女の他に、誰か適任がいるのか?」
「はい、います」
きっぱりと答えると、有田さんの口元が僅かに揺らいだように見えた。気のせいではなく確かに。
「どこにいる?」
「ここにいます、私が総務課へ行きます」
「えっ、唐津さん? 何を言ってるんだ?」
私に答えたのは有田さんではなく織部さんだった。慌てた様子で椅子から落ちそうなほど前のめりになって、私の顔を覗き込む。
離れて座っている課長までも、私へと説明を求める視線を投げかけてくる。
「織部さん、課長、すみません」
織部さんと課長に向けて頭を下げた。
二人とも目を見開いて何か言いたそうな顔で私を見つめるばかり。他のメンバーも訳がわからないと言いたげな様子で私を見ている。
何の相談もしなかった私が悪いのだから責められても仕方ない。
会議室は動揺と困惑が入り混じって、今朝の事務所の雰囲気に似てきた。